THE MALTESE FALCON (1930) Dashiell Hammett ミステリーの新たな進化、探偵はタフでワルになった いくら古典とはいえ、本屋さんで今も売ってるミステリーのネタバレは良心が咎めるわい・・・ しかし本作のように単なる犯人探しではなく、文章に味わいがあり、再読しても楽しめるミステリーなら・・・ ネタバレを読んでから本を買っても遅くはない。 こういう作品はハードボイルドに多いような気がしますけど、その元祖とも言える作品が名作「マルタの鷹」であります。 これまでの名探偵とはちがう、タフで行動的で時に非情な主人公サム・スペードはフィリップ・マーロウをはじめとする後発のハードボイルド探偵のみならず、007ジェームズ・ボンドなどのアクション・ヒーローたちにも多大な影響を与えました。 さらに言っちゃうと、同じダシール・ハメットの「血の収穫」を原案に黒澤明の「用心棒」は書かれましたし、「用心棒」をパクった「荒野の用心棒」でマカロニ・ウエスタンというジャンルが生まれましたし、マカロニ・ウエスタンに影響を受けて「木枯し紋次郎」「必殺シリーズ」「子連れ狼」といったマカロニ時代劇が生まれましたし・・・ あーもうキリがないけど、要するにダシール・ハメットと「マルタの鷹」がなかったら「キル・ビル」も「ダーティーハリー」も「蘇る金狼」も「探偵物語」も「コブラ」も「ルパン三世」も生まれてこなかったかもなー。 まさに大いなる原点なのです。 あ、あとハードボイルドって本来、無駄を省いたタイトな文体のことであって、そういう意味では本作より先に「郵便配達はいつも2度ベルを鳴らす」あたりが ハードボイルドだけに無駄をはぶいてサクッとネタバレ 舞台は戦前のサンフランシスコ。 私立探偵サム・スペードは従来の探偵小説なら悪役として登場するような、体はゴツく、顔もいかめしいタフガイだ。 依頼人に大金をふっかけたり、相棒の女房を寝取ったりするようなワルであり、基本的に金のために行動する。 そんなワルだがおのれの美学は貫き通し、最後には見事事件を解決するというダーティーヒーローぶり、確かに後のマカロニ・ウエスタンの主人公をほうふつとさせます。 そんな彼の事務所に現れた美しき依頼人ブリジッド・オショーネシー。 駆け落ちした妹を追ってシスコまで来たが、妹は会ってくれない。 相手の男(サーズビー)と今夜ホテルで会う予定だが、妹と手を切るよう説得してほしい・・・ 実にありふれた、男女のゴタゴタにからむ依頼が発端。 自身も有名なピンカートン探偵社で働いていたハメットならではのリアルな探偵稼業の描写。 依頼を受けたスペード、相棒のアーチャーをホテルに張りこませ、男の後を尾行させる。 が、直後にアーチャーは射殺体となって発見された! (サーズビーに殺されたっぽいが・・・) さらに続けざまにサーズビーも何者かに撃ち殺される。 アーチャーの女房と不倫していたことから、アーチャー殺しの疑いをかけられるスペード。 あるいはアーチャーを殺された復讐にサーズビーを殺したか。 なんとか警察の追及をかわすスペードのもとをカイロと名乗る怪しい異国人が訪ねてくる。(レバント人と書かれてますが、レバントとは東地中海地域のことなので今のベイルート人とかそのへん) 「黒い鳥の彫像を探していただきたいのです・・・」 男の手には銃が握られていた。 ここから始まる「黒い鳥」をめぐる争奪戦。 彫像の正体は、莫大な富を持つ中世のマルタ騎士団がスペイン皇帝に献上するために作らせた「黄金の鷹の像」だが、紆余曲折あって歴史の闇に消えてしまった。 今はカモフラージュのため黒く塗られたその像を、あるロシア人が手に入れる。 それを盗み出したのがサーズビーとそのパートナー、男をだますことにかけては手練手管の美女オショーネシー。 だがサーズビーが裏切ったため、スペードの力を借りてサーズビーをどうにかしようとしたらしい。 そしてロシア人の依頼を受け、盗人2人を追いかけるの狡猾でホモっぽいレバント人カイロ。 さらにそのライバル、若い殺し屋(ウィルマー)を用心棒に雇い、たまたま「黄金の鷹」の史実を知って、その探索に執念の炎を燃やす太った男ガットマン。 彼がラスボス的存在であり、殺し屋を使ってサーズビーを始末した張本人だ。 莫大な礼金を目当てに鷹を探すスペード、彼を味方につけようとする悪女オショーネシー、悪党ガットマン、オカマ男カイロと4つどもえの展開に加え、さらに警察をも相手にしなければならないスペード。 だがオショーネシーが船便でアメリカに送った鷹をたまたま入手したスペード、有利な立場となる。 クライマックスの全員そろっての話し合いでは、鷹をガットマンに渡すから礼金をくれ、くわえて誰かを殺人事件の犯人として警察に差し出さないとならないが、若い殺し屋ウィルマーを差し出そう(実際にサーズビー殺しはウィルマーが実行犯だし)ということでめでたく手打ち。 だが雇い主に裏切られ警察に売られると悟ったウィルマーは逃走。 さらに隠し場所から取り寄せた「黄金の鷹」は、実は鉛でできた偽物と判明! ガッカリな一同、だがガットマンは気を取り直して「今度こそ本物を手に入れる」と意気ごみ、カイロと仲直りしてともに旅立つ。 スペードには経費として1000ドル札1枚残して・・・ だがスペードは警察に通報、ガットマンとカイロが逮捕されるよう手配。(ガットマンは逃げたウィルマーによって復讐される) そしてオショーネシーも・・・ てっきりスペードは自分を愛していると思いこんでいた彼女だが、アーチャー殺しは彼女の犯行だとスペードは見抜いていたのだ。 当初の計画だとサーズビーにアーチャーを殺害させ、警察がサーズビーを逮捕する・・・ それによって鷹を自分1人の物にできる・・・ というつもりだったが、サーズビーが殺しを渋ったので自ら殺しを行い、その罪をサーズビーに着せる。(サーズビーは警察に引っぱられるまでもなくガットマンの手下に始末されたが) スペイドはアーチャーが嫌いだったし、彼の妻を寝取ってもいたが、それでも彼はスペードの相棒だった。 その相棒を殺された以上、男のプライドをかけてケリをつけなければならない。 恐らく君は首吊りになるだろうが、もし出てこられるなら待っていてあげるよ・・・ スペードの女に対する乾ききった愛の言葉。 ヒロインが実は大悪人というオチも、もしかしたらこのあたりが元祖? 登場人物1人1人が味があっていいですね。 ギスギスした人間関係の中で、ただ1人ボーイッシュなスペードの秘書エフィがさわやかかわいい。 あ、無駄を省くというよりメインの内容をまるっと省いてしまったような(笑 |
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ホントにまるっと省きましたね(笑) |
まる 2015/11/28 17:52 |
^^;あれ「血の収穫」じゃなくて「赤い収穫」でしたっけ? |
あうち 2015/11/28 23:33 |
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