【ネタバレ】「火星のタイム・スリップ」フィリップ・K・ディック

MARTIAN TIME-SLIP (1964)
Philip K. Dick



火星のタイム・スリップ (ハヤカワ文庫 SF 396)
早川書房
フィリップ K.ディック

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読むと世界がガブルガブルしてガビッシュするぞ

ハイハイハイ、フィリップ・K・ディックですよ。
ディックは自身で体験したクスリでのトリップ感覚や、精神的にキ○ガイになりかかった経験などを元に、妙にリアリティーにあるドロドロした異世界を描き出す人で、その作品は「読むドラッグ」とも言えますな。
若い頃は、そういった、いわゆる「ディック体験」に惹かれて読んでましたが、大人になった今は、小説としての面白さにも注目しつつ、再読しています。
そんなディック作品の中でも傑作の評価が高い「火スリ」、今回はズバリ、精神分裂症、いや今は統合失調症・・・がテーマであります。

分裂症の人は、時間感覚が狂う、記憶を時間通りに配列することができない、といった症状があるようで、それを利用して「未来を見る」ことができるのでは?という物語。
とんでもない小説ですよ、狂人でないと思いつかないアイデアです。
しかし、一般人が「精神病」と呼ぶものが、実は「超能力」なのではないか?という考えは魅力的に聞こえます。
実際に病気に苦しんでる人からすると、「ふざけるな」と言われるかもしれませんが、ディック自身も精神を病んだ人であり、決して面白半分ではなく、きわめて真剣にこのテーマに取り組んでいます。
とりあえず症状のある方は、一読してみると気持ちが楽になるかもしれません。
ディックは偽善者ではなく、本当に苦しんでる人の味方です。

実は管理人も高校時代、分裂症の知り合いがいまして、この「火スリ」を読んだ後、つい好奇心からいろいろ尋ねてしまいました。
彼の見た幻覚は、「相手の顔がドロドロに溶けて、ドクロになる」というもので、思い出したら恐怖がぶり返したようで、気の毒なことをしました。
それにしても、本作と実にそっくりな幻覚・・・ いや、幻覚なのか?
あるいはディックが言うように、エントロピーという宇宙の真理を表しているのか?

エントロピー・・・ ディック作品を理解する、重要なキーワードであります。
ですが最近、ディックエントロピーに対する考え方は間違ってるような気がしてきました。
彼の頭の中では、
死、崩壊、退廃、劣化=エントロピーの増大
生命、建設、健全、進化=エントロピーの減少

となってるようですが、ちょっとちがうんじゃありませんか?
エントロピーとは、「取りうる状態の数」だったと思いますが・・・
生命は多様な環境を生み出す。
多様性は「エントロピーの増大」になるんじゃありませんか。
逆に死や環境の破壊は、多様性の減少を招く。
「エントロピーの減少」ではないか。
まあ要するにエントロピーは単に物理の1つの単位であって、宇宙の真理とか人間の神秘、ましてや神なんかと結びつけるべきではない、と思うのです。


*** ネタバレあらすじ ***

精神分裂症の少年の能力を使い、過去へのタイム・トリップを企む強欲な男
その目的は、大規模開発の始まる前の火星の土地を、投資家に先駆けて購入すること。
一応、時間をさかのぼることには成功したものの、そこは単なる過去ではなく、分裂症患者の目を通した世界、すなわち周囲のあらゆる物が自分に敵意をもち、自分を否定してくる世界だった!
結局、土地を買うことはかなわず、強欲な男は死ぬ。
分裂症の少年は、火星の先住民とともに旅立っていく。
分裂症患者から見た世界がとにかく怖い。ガブルガブル。


他のディック作品はこんなの取り上げてます

「高い城の男」
http://puripuriouch.at.webry.info/201601/article_3.html
「火星のタイム・スリップ」
http://puripuriouch.at.webry.info/201209/article_33.html
「死の迷宮」
http://puripuriouch.at.webry.info/201709/article_5.html
「流れよ我が涙、と警官は言った」
http://puripuriouch.at.webry.info/201508/article_1.html
「聖なる侵入」
http://puripuriouch.at.webry.info/201407/article_6.html
「ティモシー・アーチャーの転生」
http://puripuriouch.at.webry.info/201703/article_18.html

映画化作品
「ブレードランナー」
http://puripuriouch.at.webry.info/201212/article_10.html
「トータル・リコール」
http://puripuriouch.at.webry.info/201403/article_16.html
「マイノリティー・リポート」
http://puripuriouch.at.webry.info/201707/article_16.html






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この記事へのコメント

いであ
2014年03月24日 16:22
エントロピーは無秩序で増え秩序で減るので、ディックの考えてるものであってますよ。
あうち
2014年03月24日 21:54
そうですね、秩序=エントロピー少ない
カオス=エントロピー増大はあってますね。
書き方が変でしたね。
死=エントロピー増大
がおかしいのでは?と書きたかったのです。
エントロピーがゼロの状態って「とりうる状態の数=1」であって、単一ですべて整然となっていて変化がない状態ですから、むしろ生命よりも死(無生命)に近いと思うのです。
生命はたとえば熱帯雨林のように多様性を生み出すので、エントロピーを増大させていると思うのですが、どうでしょう。

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