【ネタバレ】映画「群盗荒野を裂く」

QUIEN SABE? (1967)



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アメリカ人には作れない、メキシコ魂薫るマカロニ・ウエスタンの名作

バモス・ムチャーチョス!真夏のメキシカン祭り第1弾、イタリア映画「群盗荒野を裂く」(原題:知ったことか)をお送りします。
イタリアで製作された西部劇「マカロニ・ウエスタン」と呼びますが、実はウエスタン(西部)からずっと南に舞台を移して、「マカロニ・メキシカン」となってしまった作品も数多い。
マカロニロケ地は主にスペイン南部のアルメリアメキシコと風景が似てるし、地元の役者たちもアメリカ人というよりメキシコ人に近い、それにメキシコで話される言語はスペイン語
そんなわけでアメリカ西部ではなくメキシコを舞台にすれば、リアリティーが格段にアップするのです。
考えてみると、これは製作者側のなかなか巧妙な戦略ですぞ。
もともと観客はメキシコのような貧しい国に興味があったわけでなく、豊かなアメリカに興味が向いており、アメリカの西部劇が大ブームとなって、それを安い制作費でパクッたイタリア製西部劇が誕生したわけです。
しかし、このイタリア製パチモンが観衆に受けたのをいいことに、少しずつテキサスから南にスライドしていって、ついに自分たちのホームに近いメキシコへと舞台を移してしまった。
こうなると単なるパチモンではなく、同じラテンの血が流れる民族として、登場人物も自在に動かせるし、作品のレベルも上がってくる。
駄作率の高いマカロニの中でも、「マカロニ・メキシカン」は意外に出来のいい物が多く、特に本作はベスト3に入る傑作でしょう。

監督ダミアーノ・ダミアーニという左巻きな人物ですが、作品の面白さに影響なし。
マカロニでは監督より重要な音楽「続・荒野の用心棒(ジャンゴ)」ルイス・エンリケス・バカロフが担当、オープニング主題歌「ヤ・メ・ボイ」はいかにもソンブレロをかぶった太ったオッサンが歌ってそうな名曲。
劇中でひんぱんに流れる、メキシコ情緒あふれるメイン・テーマ曲「キエン・サベ?」ですが、これはバカロフではなく「音楽監督」としてクレジットされているエンニオ・モリコーネの作品と思われます。
作風がバカロフではなく、完全にモリコーネです。
メキシコのみならず、雄大な風景(例えば阿蘇山とか)を前にすると、ついつい口ずさんでしまう名曲。
サントラはもちろんゲットだぜ!


*** ネタバレあらすじ ***

メキシコのとある駅の窓口、貧しい地元民が列を作るのに混じって、1人の白いスーツ姿のアメリカ人青年の姿が。
乞食のような少年が「おじさん、メキシコは好き?」と尋ねると、冷たい顔で「嫌いだね」
アメリカ人、なんてイヤな奴(笑
オープニング主題歌が流れる中、列車は荒野を進む。
地元民に紛れて旅をするアメリカ青年ビルルー・カステル)の目的は何か?

突如、列車を襲撃する山賊の群れ、リーダーは悪名高いエル・チュンチョ
主人公エル・チュンチョに、「荒野の用心棒」「夕陽のガンマン」で凶悪な悪役を務めたイタリアの名優ジャン・マリア・ヴォロンテ
目ヂカラがハンパない人ですが、今回はその眼光を抑えて、悪党ながらも子供のように気まぐれで人間臭いエル・チュンチョを豪快に演じています。
彼の目的は、列車に積まれた武器弾薬
警備兵を全滅させる銃撃戦が序盤の見せ場。
ついに列車を制圧するエル・チュンチョ一味、獲物をぶん取って退散しようという時に、アメリカ人ビル「俺も連れていってくれ」と申し出る。
冒険を求めてメキシコへやってきたというビル、銃の腕前を買われ、仲間に加わる。
山賊団には、エル・チュンチョの金髪の弟サントクラウス・キンスキー・・・ 珍しくキンスキー悪役でなく、心の純粋な若者を演じる)や、常にパラソルを手放さない美女アデリータ「007/サンダーボール作戦」ボンド・ガールマルティーヌ・ベズウィック )や、その他いろいろ。

革命軍を指揮するエリアス将軍に心酔するエル・チュンチョ、奪った武器類はもともと将軍に売るためのもの。
だが、将軍のもとへ向かう途中で小さな村を占拠、領主を追放、村人が自分たちで村を守れるよう軍事訓練をほどこしてやったり・・・ いつもの気まぐれで、ついつい寄り道してしまう。
ビルに「将軍武器を届けなくていいのか?」とせかされ、ようやく重い腰を上げる。
が、弟のサントは「村人を見捨てたら、政府軍に皆殺しにされてしまうぞ!」と反発、1人で村に残る。
その後も旅を続ける中、ビルが熱病に倒れたり、恋人を失ったアデリータ山賊団を離脱したり、いろいろあったが、ようやくエリアス将軍の本拠地へ到着。
ここでビルは姿を消し、エル・チュンチョ将軍に歓迎される。
そして、一足早く到着した弟サントも待っていた・・・ への激しい怒りと復讐に燃えて。
案の定、山賊団が去った後、政府軍が村を急襲、村人を1人残らず虐殺。
命からがら脱出したサントは、村を見捨てたを許せず、必ずや仇を取ると誓って、この本拠地までたどり着いたのだ。
「お前は生かしておけない・・・」
に銃を向ける、そういうことなら殺されてもしゃーないか、と観念する
その時・・・ 1発の銃声が轟き・・・ エリアス将軍が倒れた!
今まさに引き金を引こうとしていたサント、驚いて振り返るが、2発目の銃声とともに倒れる。
わけがわからず、弟の死体を抱きしめるエル・チュンチョ・・・

アメリカ人ビルの正体、それは賞金目当てにエリアス将軍の命を狙う暗殺者であり、将軍に接近するためエル・チュンチョを利用したのだ。
裏山から将軍に狙いをつけた時、サントを殺そうとしている場面が目に止まり、将軍を狙撃した後、大急ぎで第2弾でエル・チュンチョを救ったのだ。
いつしかビルエル・チュンチョに対し、本物の友情を感じるようになっていたのである・・・

しかし、ビル将軍の仇にはちがいない。
ビルが泊っているホテルをつきとめ、乱入するエル・チュンチョ、今まさに旅立とうとしていたビルを取り押さえ、銃口を向ける。
落ち着き払ってビルは、フロントに預けておいたエル・チュンチョ宛ての手紙を持ってこさせる。
手紙には、「親愛なるエル・チュンチョ、君のおかげで将軍を仕留め、賞金を手にすることができた。この賞金の半分は、君が受け取る権利があると考える。フロントに預けておくから、ぜひもらってほしい」
を開けると、金貨がギッシリ詰まっているではないか。
「君のもだよ」と言われ、何をどう考えればいいのか、わからなくなってくる。
「なんなら、私といっしょにアメリカへ行かないか?」と誘われ、気まぐれなエル・チュンチョ将軍のことものことも忘れ、ビルの言葉に乗ることにした。

アメリカへ旅立つ前に、散髪してスーツも新調、すっかりジェントルマンへと変貌するエル・チュンチョ
淑女を相手にダンスのレッスン、これならアメリカに行ってもバッチリだぜ!
ということで、ついにアメリカ行きの汽車に乗りこむべく、駅へやって来るビルエル・チュンチョ
これからアメリカ人として生きていくことに決めた元山賊だが、ビル乞食の少年を冷たく突き飛ばすのを見てしまい・・・ 何かが、頭の中で弾ける。
発車の汽笛が鳴り、「さあ、早く乗れよ」とせかすビル
「やっぱり、アメリカへ行くのはやめる」
「なに?」
拳銃を取り出し、ビルの腹を撃ち抜くエル・チュンチョ
「なぜ・・・ 殺す・・・」
崩れ折れるビルの、最後の言葉。
汽車ビルの死体を乗せたまま走り去り、エル・チュンチョスーツを脱ぎ捨て、荒野へと帰っていく。

END

いろいろな考え方のできるラスト・シーンですが、アメリカの傲慢さなんでも金で解決するアメリカの資本主義に決別、人間として、メキシコ人として生きることに決めた・・・ みたいな解釈でどうでしょうか?
なんにしろ、スカッとする終わり方。
マカロニとは思えないくらい、良くできた脚本と思います。

次回はマカロニ史上最大の名作「夕陽のギャングたち」が登場!
アディオス、アミーゴ!



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この記事へのコメント

蟷螂の斧
2020年05月16日 13:19
こんにちは。BSから録画したものを先ほど見終えました。
大尉が線路上で縛られてるのから始まって、どんどん話が飛躍していきますね。
駅の窓口で割り込む若者が何を目的にジャン・マリア・ヴォロンテの仲間になっていくのか?どさくさに紛れてヴォロンテの仲間も射殺するのか?さっぱりわからない。でも終盤になってようやくわかりました。だからこそラストは痛快でした。

>ルー・カステル

こんな人は見た事がないと思ったら「カサンドラ・クロス」に出ていますね。彼はコロンビアの俳優だそうで・・・。

>ええっイーライ・ウオラック、デニーロに似てましたか笑

ルー・カステルは中村獅童に似てる?(ちょっと強引か・・・(^^; )

>眼鏡のつるって刺さるのでしょうか?

刺さるという事にしておきましょう(苦笑)。
あうち
2020年05月16日 18:14
こんにちわー。
マカロニにしては?いい脚本でしたよね。
カサンドラクロスのルー・カステルはまったく記憶にありませんね笑

中村獅童がもう少しオヤジになると似てるかも・・・(今でもオヤジでしたっけ?「デスノート」で記憶が止まってます)
へネラル・モンゴ
2020年05月16日 22:52
>いろいろな考え方のできるラスト・シーンですが、アメリカの傲慢さ、なんで>も金で解決するアメリカの資本主義に決別、人間として、メキシコ人として生>きることに決めた・・・ みたいな解釈でどうでしょうか?

チュンチョが動き出した列車のニーニョ(ビル)を、泣き笑いの顔で射殺するのがいいですよね。
肝胆相照らす「マブダチ」を自ら殺さなきゃならない悲しみと
メキシコの男として恥じることなく戦いに向かう決意の喜びが合い混じった表情。
この表情を見事に演じたきったヴォロンテは名優だと思います。

ラストで逃げ去る彼が、駅で金を渡した靴磨きの若者に言い残すセリフ
「Non comprare pane, con questo dinero, hombre... compra dinamite! 」
(その金でパンなんか買うな、兄ちゃん。ダイナマイトを買え!)
=金持ちやグリンゴに膝を屈して日々生きるより、ダイナマイトを買って戦え!
は、初めてこの映画を見て以来、ずっと心に染みています。
へネラル・モンゴ
2020年05月16日 23:08
クラウス・キンスキーが(珍しく善玉として)演じるチュンチョの弟、サント(聖人)。
彼は神に仕える神父の身でありながら、いや、だからこそ
「キリストは常に弱者の味方だった。貧しい人民のために戦うのが聖職者の義務」と信じて革命に身を投じています
兄を含めた盗賊団の仲間たち、「金と略奪と殺人が大好き」な根っからのならず者どもとは、一線を画す純粋さです。

中南米では歴史的に、「僧服を着た領主」ローマ・カソリックが圧制者の側に立っていた反面
こうした純粋な聖職者が多く、独立戦争や革命の陣営に参じました。
19世紀のメキシコで、貧しいインディオを率いて支配者スペインに対し立ち上がり
今でもメキシコの偉人として崇拝されるミゲル・イダルゴとホセ・マリア・モレロスの2人も神父でした。
また、この映画が作られた当時の中南米では、米国が飼いならした独裁政権に対する抵抗運動に
やはりカソリックの聖職者が、共産主義者と手を結び参加していました。
これらはのちに「解放の神学」というムーブメントになります。




あうち
2020年05月16日 23:33
「解放の神学」は聞いたことあありますね。
監督のダミアーノ・ダミアーニも共産党員かなんかでしたよね。
中南米くらい貧富の差がひどいと、革命にあこがれる若者が多くなるのもやむなし、かもしれません・・・

「ダイナマイトを買え!」のセリフは暴力革命バンザイみたいな、じゃっかんヤバさを感じますが笑
蟷螂の斧
2020年05月17日 01:31
こんばんは。

>イタリアの名優ジャン・マリア・ヴォロンテ

Gian Maria Volonté で画像検索しました。マカロニ・ウエスタン以外はキリッとした知的な表情が多いです。芸術家のような画像もあります。61歳で逝去という事実を知ってしまうと晩年は疲れた表情に見えてしまいます・・・。

>これは製作者側のなかなか巧妙な戦略ですぞ。

撮影場所に移動する資金や人件費を安くして尚且つ映画による収入を増やす。映画製作の鉄則です!

>駄作率の高いマカロニ

駄作と言われる作品に愛着を感じる人もいますよね?
あうち
2020年05月17日 08:46
おはようございまーす。

晩年のヒゲなしヴォロンテは本当に哲学者か芸術家のようですね。
彼も共産党員だったらしいですが、もしかして道をちがえていたらテロリストにでもなっていたかもしれない、そんあ狂気を感じます。(これは役者としての魅力ポイント)

愛情を感じてくれる人がいる作品は、真の駄作ではないと思うのです。(日本で公開されたりビデオ化された作品はまだまだマシな方では)
1000本近く製作されたというマカロニのうち、本当の駄作は我々の目に触れることがない・・・恐るべしマカロニの真の闇!
蟷螂の斧
2020年05月17日 08:58
おはようございます。今朝早起きをして「悲しみよ こんにちは」を見ました。デヴィッド・ニーヴンとデボラ・カーはあの9年後に「007カジノロワイヤル」で共演したんですね。ちょっと笑えます!
「悲しみよ こんにちは」というタイトルはこちらを先に知ってしまいました。34年も前に。
https://www.youtube.com/watch?v=v9D3JwF736E

>もしかして道をちがえていたらテロリストにでもなっていたかもしれない

なるほど。知的だけど怖い一面もある。

>本当の駄作は我々の目に触れることがない・・・

香港映画もそうでしょうね。
へネラル・モンゴ
2020年05月17日 11:07
ヴォロンテとダミアーニ監督に加え、原案のフランコ・ソリナスもイタリア共産党員ですね。
ソリナスは労働運動家上がりで、「豹/ジャガー」「復讐のガンマン」のようなマカロニウエスタンのほか
「アルジェの戦い」「ケマダの戦い」「戒厳令」といった作品の原案・脚本を担当。
そのタイトルからわかるとおり革命や植民地闘争を好んでテーマにしてますね。

「ダイナマイト」は、メキシコ革命では革命軍を象徴する兵器の一つでした。
正規軍である連邦政府軍と違い、敵の防壁や陣地を爆破する工兵隊も専用の爆薬も持たない革命側では
鉱山労働者や土木労働者たちがその代りを務め、時には彼らから手ほどきを受けた盗賊や農民上がりのゲリラ兵が
工事用のダイナマイトを使い、命がけで敵への突破口を作ったといいます。
敵の

あと、どうでもいいことですが、サンミゲルの町で処刑される大地主の妻役のカルラ・グラヴィーナは
ヴォロンテの不倫相手で、子供ももうけてたそうです。
へネラル・モンゴ
2020年05月17日 11:11
「敵の」は消し忘れでした。見苦しくて失礼しました。
あうち
2020年05月17日 12:57
>蟷螂さん

斉藤由貴来ると思った!
「めぞん一刻」主題歌ですね、レコードもってました笑
そういえば元ネタの映画はまだ見たことないなあ。
原作小説も有名ですよね?(サガンでしたっけサリンジャーでしたっけ、サガレンジャーでしたっけ)

緒形拳も名優すぎて本物の殺人犯に見える時ある・・・
あうち
2020年05月17日 13:04
>モンゴ将軍様

脚本家はまったく注目してなかったなあ。
あの時代は共産党ばかりですね笑 (時代背景を考えると仕方ないか)
上げていただいた作品は音楽エンニオ・モリコーネが多いけど、まさかモリコーネまで?
しかし共産党=ナチスのような悪のイメージが広まるのは、ソ連の悪事が広く知られるようになってからですからね。
昔はけっこう共産党を応援する人多かったし、そういえばウチの死んだ父も選挙の時はいつも共産党に入れてたな笑

なるほど、ダイナマイトは工事現場から労働者がいただいてきて武器にするわけですね。
だからマカロニの最後の武器でダイナマイトが多用されるわけだ・・・

あの奥方がヴォロンテとできてたとは味わい深い笑
2020年05月19日 14:09
とても分かりやすいあらすじで感心しました。
ただし、quien sabeは英語だとwho knowsです。つまり「誰がそんなこと知るか、知ったこっちゃない」の意で「何故殺す」ではありません。マカロニウエスタンは母国語でないイタリアの人が英語とスペイン語で作っているところにも面白さがあります。
あうち
2020年05月19日 14:28
ご指摘ありがとうございます!
はずかちー!

実は本作のサントラ盤の解説で原題を「なぜ殺す」と訳していた(ような記憶・・・)
さっそく修正させていただきます!

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