【ネタバレ】「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」フィリップ・K・ディック

DO ANDROIDS DREAM OF ELECTRIC SHEEP? (1968)
Philip K. Dick



アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229))
早川書房
フィリップ・K・ディック

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「ブレードランナー」原作として名高い、ディック哲学の金字塔

まずリドリー・スコット監督「ブレードランナー」のエントリーはこちら
http://puripuriouch.at.webry.info/201212/article_10.html

原作のリック・デッカードハリソン・フォードのようにカッコよくはなく、単なる中年のオッサンじゃ!
うどんも食わないし。
映画は原作の重要な要素をカットしまくって、シンプルな追跡劇に仕立てましたが、上映時間など考えると止む無しか。

原作の世界観はこんな感じ。
核戦争後の、死の灰が降りつのる地球。
人口も減り、生物も多くが死に絶えてしまった世界では、本物の生きている動物は貴重であり、ペットを飼うことが人々の最大の関心ごととなっている。
昆虫から馬まで、あらゆる生物を扱うペットショップが大繁盛し、動物の種類ごとの公式価格表が毎年発表される世界では、ペットは自動車のような資産である(中古の下取りまである)と同時に、荒んだ心を癒してくれるかえがえのない友なのだ。
本物を買う金がない人は、本物ソックリの電気動物で我慢するしかない。
電気羊を飼う主人公デッカードのように・・・

ペットと並んで、つらい生活を送る人々の心を支えるのは、マーサー教共感ボックス
ボックスのレバーを握ると、目の前には荒れ果てた山をトボトボ登っていく1人の老人の姿。
この老人ウィルバー・マーサーは目的もわからないまま、ただひたすら山を登っていくのだが、姿の見えない何者かによって石を投げつけられたり、山の頂上まで登ると谷まで転げ落ちたり、とにかくしんどい。
だが共感ボックスのレバーを握ってる人々は、いつしかマーサーと一体化し、全員で1人のマーサーとなって、荒れた山をどこまでも登っていく。
この経験が、とにかく心を癒してくれるらしい。
つらい人生を1人ではなく、皆でいっしょに生きていくという感覚が味わえるからでしょうか。

TVでは人気司会者のバスター・フレンドリーが人気番組「バスター・フレンドリー&フレンドリー・ピープル」に1日23時間出演、さらにラジオでも別番組で1日23時間出演してるので、合計1日で46時間出演するという、みのもんたもビックリの仕事ぶり。(もちろん人間ではなく、その正体はアンドロイド
マーサー教を敵視するフレンドリーは番組の総力を挙げてマーサーの正体を追跡調査、物語の終盤、ついにマーサーが実は戦前の売れない俳優であり、毎度おなじみの荒れ果てた山映画のセットだったことが暴露される。

滅びゆく地球に見切りをつけ、火星植民地に移住する人も多い。
火星で奴隷として重労働に従事するのは、精密に造られた人間ソックリのアンドロイドたち。(映画ではレプリカントなんてカッコよく呼んでますが)
ところで最近、アンドロイドといえばグーグルOSを連想する人が多いと思いますが、本来の意味は「人間型ロボット」のことです。
最新型アンドロイドは人間並みの知能を備え、自由を求めて地球へと逃亡を図る者もいる。
そうした逃亡アンドロイドを追跡、処分するのがバウンティ・ハンター=賞金稼ぎ(映画ではブレードランナーなんてカッコよく呼んでますが)、主人公デッカードの職業なのだ。

今回も新たに8人の男女のアンドロイドが脱走、地球に潜伏。
手配書を受け取ったデッカードは1人ずつ狩っていくが・・・
その過程でアンドロイドに同情するようになったり、自分もアンドロイドではないかと疑わしく思ったり・・・
完璧に人間と同じ生体組織を持ったアンドロイドを医学的に人間と判別する方法はなく、唯一の判別法が心理テストなのだ。
アンドロイド「共感」「感情移入」ができない。
動物や人間がいじめられていても、「かわいそう」という感覚が起きない。
共感ボックスのレバーを握っても、何も感じないのだ。
(逆にいうと「共感」「感情移入」できる人が「本物の人間」ということですね、ディックの定義では)
ただ一部の分裂病患者はアンドロイドと同じ反応を示すことがあり、もしかすると分裂症傾向のある本物の人間を間違って殺したこともあるかもしれない・・・

「本物」「精巧な偽物」の対比、分裂病「キップル」という言葉で表現されるエントロピー増加・・・ ディック作品でおなじみの要素が散りばめられ、なおかつ世界が崩壊していくディック現象」も抑えてあるので、初めての人にもとっつきやすい、ディック入門用に最適な作品といえます。

さてクライマックス、残る3人のアンドロイドを追って、廃棄された街へやって来るデッカード
そこで敵の待ち伏せを教え彼を救ったのは、インチキが暴露されたばかりのマーサーだった。
確かに彼の正体は売れない役者であり、彼が登る山も映画のセットである。
それは間違いない事実なのだが・・・
同時に彼は、本物の神のような存在でもあったのだ。
ここがディック作品を奥深いものにしてるポイントであり、初めて読む人にはわかりにくいところかもしれません。

ディック作品の世界は、だいたい三重構造になってます。

1、偽の世界ドラッグや分裂病、機械によって作りだされた疑似世界。ただまったくのインチキではなく、「真の世界」のヒントが隠されている)
本作でいうと、共感ボックスによって体験できるマーサーが山を登っていくビジョンの世界。
マーサー教団によって作られたヤラセであり、マーサーの正体は俳優だった。

2、主人公たちが生活する現実の世界(いろいろ問題が多い、生きていくのがつらい世界。エントロピー増加によって崩壊へと向かっていく)
この「現実」「偽の世界」の境界線がグニョグニョになっていくのがディック現象であり、本物の精神病でジャンキー作家だったディックの醍醐味と言えるが、本作では控えめ。

3、本物の神によって作られた真の世界
「現実」もまた「真の世界」ではなく、その背後に本物の神本物の世界が存在する・・・ してほしい・・・ というディックの願望。
ディック作品にはしばしば「神」が登場しますので、厳密にはSFとは言い難いですよね。
マーサーが俳優をしていた現実世界というのは「真の世界」ではなく、マーサー神に近い存在人間に寄り添う者人間と神の仲介をする者だったのです。

マーサーによって助けられたデッカードアンドロイドを全員始末するが、精神的に疲れ果て、無人の荒野へと飛び立つ。
そこで自分自身がマーサーになって、荒れ果てた山を登る体験をするのであった。

映画ではあくまでも「人間」「アンドロイド」という構図でしたが、原作ではさらに「神」という要素が加わって、深い内容となっています。

他のディック作品はこんなの取り上げてます

「高い城の男」
http://puripuriouch.at.webry.info/201601/article_3.html

「火星のタイム・スリップ」
http://puripuriouch.at.webry.info/201209/article_33.html

「死の迷宮」
http://puripuriouch.at.webry.info/201709/article_5.html

「流れよ我が涙、と警官は言った」
http://puripuriouch.at.webry.info/201508/article_1.html

「聖なる侵入」
http://puripuriouch.at.webry.info/201407/article_6.html

「ティモシー・アーチャーの転生」
http://puripuriouch.at.webry.info/201703/article_18.html

映画化作品

映画「ブレードランナー」
http://puripuriouch.at.webry.info/201212/article_10.html

映画「トータル・リコール」
http://puripuriouch.at.webry.info/201403/article_16.html

映画「マイノリティー・リポート」
http://puripuriouch.at.webry.info/201707/article_16.html



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