【ネタバレ】「高い城の男」フィリップ・K・ディック

THE MAN IN THE HIGH CASTLE (1962)
Philip K. Dick



高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)
早川書房
フィリップ・K・ディック

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ワーイ日本とドイツが戦争に勝ったバンジャーイ

最近アマゾンによってドラマ化され、話題となってるディック「高い城の男」
とれーらー
https://www.youtube.com/watch?v=42a3jwxypj0
https://www.youtube.com/watch?v=wgvSE4-uktQ
なんか日本を悪者っぽく描いてますなー
そういう話じゃないんだけどなー

アメリカでは地下鉄内を埋め尽くすような過激な広告で賛否両論、ニュースにもなってましたな。
http://developer.cybozu.co.jp/akky/2015/11/amazons-axis-themed-subway-ads-catches-attensions/

ディック小説としては最後まで破綻せずまともな構成となっており、その辺もヒューゴー賞を受賞した一因と思うのですが、その分ディックならではの「世界がグニャグニャ」になってくる「ディック体験」の魅力には乏しい。
まあ一言で言ってディックの中ではそんなに面白い方でもないかな、と思います。
でもSFではなく純文学作家を志望していたディックとしては、本来書きたかったのは、こういう小説だったかも?

第2次大戦で枢軸側が勝利、アメリカが日本とドイツによって分割支配されるという(アメリカ人にとっては)悪夢の世界。
支配民族として日本人も多数登場し、そして日本文化に対して称賛するような描写も多いのですが、おそらくディックには日本人の知り合いは1人もいないのでしょう、かなりステレオタイプで教科書的な印象を受けます。
日本人の友人と楽しく過ごしたイアン・フレミング「007は2度死ぬ」が多少ムチャクチャながらも生き生きと日本人を描いていたのとは対照的。
かわりにドイツ人に対する分析が的確で深いものを感じる。(ディック自身が先祖がドイツ系とどこかで読んだような・・・ あやふゃー)
管理人も昨年のVW不正事件では正直者と思っていたドイツ人の意外な一面にビックリしたくちですが、そういえばドイツ人という民族についてこれまで深く考えたことなかったなー。
観念的なものに取りつかれやすい、自分たちを神に近いものと考える民族。(とディックは書いている)
昨今の狂気のレベルに近い難民受け入れへの執着は、ユダヤ人を迫害した精神と表裏一体なのではないだろうか?

ま、それはそれとして、この勝者と敗者が逆転した世界には、あと2つ面白い仕掛けが施されています。
ひとつはアメリカで、中国の占いである「易経」が大流行していること。
竹の棒をジャラジャラして「卦は凶!お命終わります」とかゆーアレですね。(それは「必殺仕切人」や!)
マイ易経セットを持ってる人も多いようで、複数の登場人物が易経によって行動指針を決めている。
日本に支配された影響で易経が広まったようですが、別に日本でもそんなに易経はやってねーだよ・・・
2つ目は地域によっては禁書にもなってる「イナゴ身重く横たわる」という謎のベストセラー小説
内容は「第2次大戦で連合国側が勝利していた世界」を描く、現実とは歴史の反転したSF小説!(つまり我々の知ってる本当の歴史を描いている・・・ が、厳密には史実と異なる点もあり)
このヒネリの利いた設定こそ、ディックならではの魅力ですなー。
この著者はナチスを冒涜したとして命を狙われており、「高い城」と呼ばれる警戒厳重な屋敷に住んでいる。

こういった世界で、複数の登場人物たちが脱サラしたり、命を狙われたり、ドイツ指導者が亡くなって政変が起きたり、美術品に精巧な偽物が入りこんで本物と偽物がワケわからなくなったり、いろいろ起こるのですが、重要な中心線となるのが柔道を習ってるバツイチ女性ジュリアナ
ドライブインで知り合ったトラック運転手ジョーに誘われ、「イナゴ」の作者に会いにシャイアンまで旅に出る。
彼女は単にベストセラー作家に会って本にサインをしてもらおうという単純な動機ですが、道連れのジョーの正体はナチスに雇われた暗殺者だった。
シャイアンまでもう少しというところでジョーの正体を知ったジュリアナ、ムキーッとなってカミソリの刃でジョーを殺してしまう。(こわい・・・)
そして単身シャイアンの「高い城」を訪問、作者に「あなたは命を狙われている」と警告。
ついでに、「なぜ『イナゴ』みたいな本を書いたの?」と質問。
ここで、実は易経の愛用者である作者が易経によって出た結果を小説にしただけと判明!
それではなぜ易経「イナゴ」を書かせたのか?
作者が易経で占ってみると「真実の世界」という卦が出た・・・
つまり「イナゴ」で描かれた世界が「真実の世界」
ということは登場人物たちが暮らすこの世界、「偽の世界」ということですね。

もうひとつの重要シーンがクライマックスに来る。
ドイツ政変にともなう血生臭い争いに心身ともに疲れ果てた日本人の田上は、アクセサリー職人フランクジュリアナの元の夫でユダヤ人)から買い取った手作りのブローチを、公園のベンチに腰掛け、じっくりと鑑賞する。
この手作りの芸術品には、なにか「道(タオ)」を感じるのだ・・・
しばらくブローチを見つめた後、事務所に帰ろうと歩き出すと、街の様子が何かちがう。
そこはアメリカ人が普通に暮らす本物の(現実の)アメリカだった!
道(タオ)の力によって偽の世界が破れ、本物の世界が出現したようです。
これは「完璧に本物とソックリに作られた偽物は、本物と同しではないのか?」という作中の問いの答えになってますね。
本物には「道(タオ)」がある。
偽物はどんなに外見がソックリでも「道(タオ)」がない。
うーんなんか深い。

そんなこんなで物語は終わり。
登場人物たちが「偽の世界」に飛ばされる、というパターンのディック小説はたくさんあります。
怪しいドラッグによって出現した世界だったり、人口睡眠マシンで夢を共有していたり、「偽の世界」が出現する理由はさまざまですが、今回は「なぜ歴史が反転した世界が出現したのか?」という説明はありません。
ただ登場人物たちは「偽の世界」に生きている、ということが暗示されるだけです。
ま、その理由をグダグダ説明したら単なるSFになってしまうし、文学作品にはならないからねー。
でも文学よりSFの方がおもしろいと思うけどねー。

他のディック作品はこんなの取り上げてます

「高い城の男」
http://puripuriouch.at.webry.info/201601/article_3.html

「火星のタイム・スリップ」
http://puripuriouch.at.webry.info/201209/article_33.html

「死の迷宮」
http://puripuriouch.at.webry.info/201709/article_5.html

「流れよ我が涙、と警官は言った」
http://puripuriouch.at.webry.info/201508/article_1.html

「聖なる侵入」
http://puripuriouch.at.webry.info/201407/article_6.html

「ティモシー・アーチャーの転生」
http://puripuriouch.at.webry.info/201703/article_18.html

映画化作品

映画「ブレードランナー」
http://puripuriouch.at.webry.info/201212/article_10.html

映画「トータル・リコール」
http://puripuriouch.at.webry.info/201403/article_16.html

映画「マイノリティー・リポート」
http://puripuriouch.at.webry.info/201707/article_16.html



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