【ネタバレ】「最後の国境線」アリステア・マクリーン

THE LAST FRONTIER (1959)
Alistair MacLean


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極寒のハンガリー大雪原を舞台にマクリーン節炸裂

スパイ小説の名作を続けてネタバレしておりますが、今回は冒険小説の王者マクリーンが、初めて冷戦時代を舞台に描く「最後の国境線」。(これ以前の3作はいずれも第2次大戦が背景)
彼の作品の中でも名作「女王陛下のユリシーズ号」に次ぐ情感あふれる忘れがたい作品で、長らく絶版なのが寂しい・・・
007より前に「秘密諜報機関」の邦題で映画化もされております。
主人公の諜報員レナルズ「オリエント急行殺人事件」の犠牲者リチャード・ウィドマークが演じていますが、その彼を殺すのがジェームズ・ボンド・・・ おっとネタバレ注意。

ミサイルの弾道を計算する権威ジェニングズ教授がソ連によって連れ去られ、現在はソ連衛星国のハンガリーに滞在中。
彼を連れ戻さないと、ソ連のミサイルが恐ろしいことになってしまう・・・ ということで英国の諜報員レナルズ大尉は雪のハンガリーに潜入。
この主人公がマクリーン作品には珍しく、プロフェッショナルにも関わらず失敗したり助けられたりしてばかり。
それでも任務を遂行できたのは、強力な助っ人がいたから。
レナルズをサポートするのは、秘密警察AVOに捕らわれた無実の市民を救出、西側へと亡命させる反政府組織の面々。
彼らこそが本作の真の主人公であり、マクリーン作品全般を通じてもっとも魅力的なキャラクター集団といえるでしょう。

では、その反政府組織のイカレたメンバーを紹介しよう。
1、組織のリーダー、鋼鉄の意思を持つ「ジャンシ」ことアレクセイ・イリューリン、ウクライナ人。
磔にされても裸で雪原に放り出されても生還した不死身の男。
全身傷だらけ、特に両手は無残につぶれている。
「ユリシーズ」の艦長に匹敵する、マクリーン作品最高の上官。
とくにレナルズとともにAVOに捕らわれ、薬物拷問を受けるシーンで発揮する精神力は圧巻!
2、ふだんは秘密警察の大佐として働いている冷静沈着な氷の男、ミステリアスな「伯爵」と呼ばれる人物。
正体はポーランド貴族、愛する妻と息子を失った心の空白を埋めるため、ジャンシとともにAVOと戦う。
主人公レナルズを完全に食ってしまうカッコ良さ、マクリーン史上最高にカッコいい人物。
3、サンダー 怪力の大男、クライマックスでAVO側の巨漢ココとプロレス対決の見せ場あり。
4、コサック ムチの達人の美少年
5、イムレイ 常にビクビクしている暗い男、AVOに捕らわれ拷問死。
6、ジュリア ジャンシの娘


さて、あらすじをサクッとまとめる。
極寒のハンガリーに潜入したしたレナルズは、さっそく検問に引っかかり警察に御用となるが、AVOの大佐である「伯爵」に助けられ、反政府組織と無事合流。
彼らの協力でジェニングズ教授の泊まってるブダペストのホテルが判明、時を移さず潜入するレナルズ教授と面会、イギリスにいっしょに帰るよう説得。
だがシャワー内部に盗聴マイクが仕掛けてあると気づかずに浴室で会話していたため、全部AVOに筒抜け。
ジャンシの隠れ家が急襲され、間一髪脱出するも、教授の身柄は刑務所に移される。
ただちにレナルズジャンシはAVO士官のフリをして、教授を引き渡すよう刑務所長と交渉、しかし正体が割れて薬物拷問。
ジャンシに励まされて耐え抜くレナルズ、最終的には「伯爵」にまたもや救われる。

ここまで何の活躍もしてないレナルズ、せめてクライマックスくらいは主人公ぽいことさせてくれー、というわけで列車で移送される教授を追って、凍りついた列車の屋根を飛び移る映画っぽいアクションの末、無事に教授を取り戻す。
オーストリア国境に近い隠れ家に全員集合、あとは国境を通り抜けるだけ・・・
だがAVOは自走砲まで持ち出して隠れ家を襲撃!
しかも、とうに死んだと思っていたジャンシの妻、そして捕獲したジュリアを人質とし、教授を引き渡すよう迫ってくる。
ここで伯爵教授に扮装し、敵側と接触して手榴弾で自爆。
ジャンシ妻ジャンシの元へ帰って来るが、銃弾を受け、夫の腕の中で死亡。
長い収容所生活で白髪の老婆と化してしまっていたが、ジャンシの目には「昔と変わらず美しい」と映るシーンが泣ける。

ジュリアは恋に落ちたレナルズとともに、そして教授とともに、国境を越え西側へ。
ジャンシサンダーコサックとともに、今後も反政府活動を続けるためハンガリーに残る。
もう2度と再会することはないであろう、ラストの別れのシーンが胸に迫る。

本作ではいつになくマクリーンが政治的な意見をあれこれ述べていますが、「最後の国境線は人間の心の中にある」というマクリーンの世界観は、ちょっとナイーブというか理想主義すぎるかなあ。
国境があるからこそ中小国のアイデンティティーが守られているのであって、国境がなくなるということは、要するに大国が世界すべてを支配するってことだと思いますよ。
なくすべきは「大国」であって、国境ではない。
すべての大国を細かく分割して国境だらけの世界にすれば、小さな小競り合いは増えるけど、大きな戦争は減るかもね。











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