【ネタバレ】「ヒューマン・ファクター」 グレアム・グリーン

THE HUMAN FACTOR (1978)
Graham Greene







スパイ文学最高峰、裏切った理由は「人間的要因」

「第三の男」の原作者グレアム・グリーン、イギリスを代表する現代作家であります。
実際に英国秘密情報部に勤めていたグリーンが、実際に起きたキム・フィルビー事件を元にして(いや、元にしたように見えるが、してないと本人は否定)描いたスパイ小説最高傑作。(キム・フィルビーグリーンの上司だったんだって!)
同じキム・フィルビー事件を元にしたル・カレ「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」も面白かったけど、読んでいてグリーンの方が数段格上と思える。
スパイものなのに、単なるエンタメではなく文学作品。
「スパイ文学」なるものが存在するイギリス、すごい。
さすがスパイの国。
文学なのに読みやすいしハラハラして面白い!
学校の宿題などで、「文学作品を読んで感想を書かなければならないが、文学は苦手!スリリングなのが読みたい!」というような方にもオススメ。

ところどころ007を意識した記述があって笑える。
グリーン、けっこうイアン・フレミングを妬ましく思ってるんじゃないかな・・・
そういえば「慰めの報酬」の悪役、最後にEがつくグリーンって、グレアム・グリーンからいただいた名前かしら。
では、時系列に沿ってネタバレしていきますぞ。
文学作品だろうと、いつもどうりサクッとまとめる!


イギリス情報部員として南アフリカに赴任していた主人公カッスルは、工作員として使っていた黒人女性セーラと恋に落ちる。
だが当時の南アフリカはアパルトヘイト(人種隔離政策)バリバリの時代。
白人と黒人の愛が許されるはずもなく、カッスルセーラも秘密警察に目をつけられてしまう。
そんな苦境から救ってくれたのが共産主義者カースン
彼のおかげでセーラと、その連れ子サムとともに無事アフリカを脱出したカッスル、イギリスに帰還。
結婚し、ロンドン郊外に家を持ち、家族3人で幸せな暮らしを始める。
勤めも本部のアフリカ・セクションに転属、あまり重要でもない情報を整理する退屈で平凡な毎日。
だが本書の前半で明かされるが、カッスルにはとんでもない秘密があった。
助けてくれたカースンに恩返しするため、彼の紹介でソ連のスパイと接触、情報を流し始めたのだ・・・
「ティンカー」は情報部内に潜りこんだソ連のスパイを捕まえる話でしたが、本書は逆に、潜入したスパイの立場から語られるのです。
祖国に対する裏切り者となったカッスル、しかし彼にとって「祖国」とは愛する妻であり家族なのだ
その大切な「祖国」を救ってくれたカースンに恩義を感じており、別に共産主義に共鳴しているわけではない。

アフリカ・セクションはヒマな部署であり、スタッフはカッスルともう1人、若いデイヴィスしかいない。
そのアフリカ・セクションから情報が洩れている・・・
上層部は、若いデイヴィスを疑う。
高いワインを飲んだり、たまに仕事をサボッたり、極秘資料を外部に持ち出したり、怪しい点が多いからだ。
逮捕すると裁判になったりスキャンダルになったり、いろいろめんどくさいから、こっそりと消してしまおう。
長官の右腕、医師のパーシヴァルデイヴィスに毒を飲ませて殺してしまう。
このドクター・パーシヴァル、殺人を人体実験程度にしか考えていない、なかなか恐るべき人物で、007に悪役として登場しても違和感ないだろう。

自分のためにデイヴィスが疑われ、暗殺されてしまった!
真犯人のカッスルはびびって、ソ連との連絡を断つ。
だって2人しかいないのに、1人が死んでも情報漏れてたら、自分がスパイってバレちゃうしね・・・
そんな時、イギリスと南アの共同作戦のため来訪した、南ア情報部の偉い人を自宅で接待するカッスル
この偉い人は、かつてカッスルセイラを逮捕した秘密警察の男ミュラー
「イギリスの工作員とわかってれば、逮捕しなかったのにー」などとのたまい、セーラサムにも礼儀正しいミュラー
しかしその表面的な礼儀正しさは、露骨な人種差別よりもイヤラシイと感じるカッスル
すっかり気を許したミュラーは、カッスルに恐るべき計画の内容を打ち明ける。
南アの広大な国境線を警備しきれないので、住人のいない無人地帯では戦略核兵器を使って、鉄条網の代わりに放射能による国境線を引こうというのだ・・・
お、なんか007ぽくね?
「それでは住民が放射能で被爆してしまうではないですか!」
「だから白人の住民がいるところではやらないってば」
ブッシュマンのような遊牧民は、被爆しようがどうでもいいという態度。
アフリカを母国以上に愛するカッスルにとって、これは許せない。

いったんは接触を断ったソ連側の連絡員に、この恐るべき計画を止めてくれるよう最後の通信を試みるカッスル
だが、このためにカッスルの正体が情報部にバレてしまった!
ソ連側の援助でイギリスを脱出、モスクワでKGBに迎えられるカッスル
ここで今後の生活は一種の特権階級として保障されるから心配はないのだが、問題はイギリスに残してきた家族だ。
KGBはセーラの出国手配も進めるが、ここで息子のサムセーラのパスポートに記載されていないことが判明。
セーラ1人ならどうにか逃がすことはできるが、サムのパスポートを新たに作ることは難しい。
しかしセーラサムを置いていくことはできない・・・

イギリス情報部の厳しい監視の中、やっとこさカッスルセーラと電話で話すことに成功。
いつかサムが成長し、独り立ちしたら、必ず君を迎えによこす・・・
いつかきっと、モスクワで会うことができる・・・
果たしてこの先どうなるのか? というところで幕が下りる。
家族のためソ連のスパイとなったカッスルだが、そのために最愛の家族と引き離されるという悲しいラスト。
いろいろと考えさせられますが、今は何も考えない。
夜も遅くて、ねむねむだから・・・



情事の終り (新潮文庫)
新潮社
2014-04-28
グレアム グリーン

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 情事の終り (新潮文庫) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



第三の男 (ハヤカワepi文庫)
早川書房
グレアム グリーン

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 第三の男 (ハヤカワepi文庫) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



二十一の短編 ハヤカワepi文庫
早川書房
グレアム・グリーン

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 二十一の短編  ハヤカワepi文庫 の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル


ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 1

ナイス

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック