【ネタバレ】 「パーマー・エルドリッチの三つの聖痕」 フィリップ・K・ディック

THE THREE STIGMATA OF PALMAR ELDRITCH (1964)
Philip K. Dick



パーマー・エルドリッチの三つの聖痕 (ハヤカワ文庫SF)
早川書房
フィリップ・K・ディック

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キャンディーなめなめ、チューズィーかみかみ

管理人が高校時代、2冊目に読んだディックが本書「パーマー・エルドリッチの三つの聖痕」であり、これで完全にハマりました。
ドラッグをテーマにしたドラッグSFであり、他にこういうSFがあるのか知識が浅いので知りませんが、途中から実は宇宙生物による侵略ものだったと判明。
魔薬チューZによる幻覚体験がなんとも生々しいのですが、本書執筆時点ではディックはまだドラッグ経験がなかったそうで、ええーホンマかいなと驚いてしまいます。(ドラッグ常習者の体験を参考にして書いたそうです)
が、今回読み直してみて、確かに後の(ディックが本物のジャンキーになってから書かれた)「暗闇のスキャナー」あたりに比べて、「頭で考えてる」印象があるのに気づいた。
ま、それがかえって作品を読みやすくしてるというか、物語に破たんをきたしてないというか、ちゃんとした小説になってます。
末期の精神ドロドロの廃人になってからの作品は、底なし沼のような魅力はありますが、やはり読む人を選ぶというか笑
というわけで入門者の方にもオススメの傑作。
読むのがメンドイ人のため、サクッと内容をまとめてみます。

まずは例によって、そのユニークな世界観から。
未来の地球は年々気温が上昇、破滅に向かっている。(おっリアル)
そのため国連は選抜した地球人を強制的に火星へ移住させているが、不毛の砂漠が広がる火星は人間にとって、あまりに過酷な世界。
「地球に帰りたい・・・」
そんなホームシックに襲われた移民のため用意されたのが「パーキー・パット」というお人形セット。
要するにリカちゃん人形(というより、その原型のバービー人形)ですが、精密に再現された家具や生活用品のミニチュアといっしょに人形ハウスに並べれば、懐かしい地球の思い出に浸れる・・・
これだけでも面白いアイデアですが、さらにもう一枚、仕掛けが。
単に人形セットを眺めるだけでなく、同時に「キャンD」というドラッグを服用すると、なんと意識が人形セットの中へ入っていく!
女性ならパーキー・パットに、男性ならそのパートナーのナントカ君の人形に意識が移行して、完全に地球のパーキーの家で生活してる気分になれるのだ。
ただしこの「トリップ」体験は時間に限りがあり、ヤクが切れれば、現実の不毛な火星に戻ってきてしまう・・・

このパーキー・パット人形を一手に取り扱う企業の、やり手社長がレオ・ビュレロ
火星にドラッグ「キャンD」を配布する元締めでもある。
そんな彼のもとに飛びこんできた不吉な情報・・・
遥か彼方のプロシキマ星系より、伝説の星間実業家パーマー・エルドリッチが太陽系に帰還したという。
キャンDより格段に強力な新ドラッグ「チュ-Z」を現地で入手して・・・
事故により片目が義眼、歯が義歯、片腕が義手(これが「三つの聖痕」)という姿のエルドリッチ
レオが支配する市場を乗っ取るつもりだろうか?
さっそく情報を収集、エルドリッチを亡き者にせんとするレオだが、逆に罠にハマって、恐るべきチューZを打たれてしまう。

チューZは人形セットなど必要ない。
完璧な幻覚世界を、望めば永遠に持続させることも可能。(現実世界ではわずかな時間でも、意識の中では永遠に引き延ばせる)
誰でも頭に思い描いたイメージを実体化できる、過去にも未来にも行ける、まさに夢のような世界だが・・・ 恐るべき落とし穴があった。
この世界にはあらゆるところに、義眼・義歯・義手を具えたパーマー・エルドリッチが存在しているのだ!
「ユービック」は「神の遍在」を意味する言葉でしたが、この「チューZの世界」はまさにエルドリッチが遍在する世界、エルドリッチが神として支配する世界なのだ。
さらに、ヤクが切れてトリップが終わったーと思ったら、実はまだ幻覚の世界だったり・・・
本当に現実に戻ってきてもなお、周囲の人間に「義眼・義歯・義手」が見える、つまりエルドリッチの遍在する世界にいるようなフラッシュバック現象を起こしたり・・・
ハード・ドラッグの恐ろしさというものをこれでもか、と味あわせてくれる。
まさしく「人間やめますか、チューZやめますか」

エルドリッチの正体は宇宙空間に漂う神に近い宇宙生物であり(本物のエルドリッチはこの怪物に食われた)、地球の神となる目的でチューZをもたらした。
将来的にはレオが武装船でエルドリッチを攻撃、殺してしまうらしい。(という未来が予知されるが、物語はその手前で終わる)
このエルドリッチに化けた怪物、必ずしも邪悪な存在とは限らず、主人公バーニイチューZ世界の中で、妻と離婚した過去をやり直そうとするのを助けたり(バーニイが常にまちがった選択をするので常に失敗するが)、人間を助けたいという気持ちもあるようだ。
いい奴なのか悪い奴なのか謎ですが、ディック作品で最高のモンスターなのはまちがいない。
例によってSFと宗教が混ざり合った、ディックならではの奥深い傑作でした。


フィリップ・K・ディック作品のネタバレ
「高い城の男」
http://puripuriouch.at.webry.info/201601/article_3.html
「ユービック」
https://puripuriouch.at.webry.info/201808/article_7.html
「火星のタイム・スリップ」
http://puripuriouch.at.webry.info/201209/article_33.html
「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」
http://puripuriouch.at.webry.info/201412/article_5.html
「最後から二番目の真実」
http://puripuriouch.at.webry.info/201710/article_11.html
「死の迷宮」
http://puripuriouch.at.webry.info/201709/article_5.html
「流れよ我が涙、と警官は言った」
http://puripuriouch.at.webry.info/201508/article_1.html
「聖なる侵入」
http://puripuriouch.at.webry.info/201407/article_6.html
「ティモシー・アーチャーの転生」
http://puripuriouch.at.webry.info/201703/article_18.html

フィリップ・K・ディック原作の映画化作品ネタバレ
「ブレードランナー」
http://puripuriouch.at.webry.info/201212/article_10.html
「トータル・リコール」
http://puripuriouch.at.webry.info/201403/article_16.html
「マイノリティー・リポート」
http://puripuriouch.at.webry.info/201707/article_16.html
「ペイチェック 消された記憶」
https://puripuriouch.at.webry.info/201803/article_12.html











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この記事へのコメント

あうち
2018年08月15日 20:40
ありがとうございます!
こちらこそよろしくお願いします!

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