【ネタバレ】 「脱出航路」 ジャック・ヒギンズ
STORM WARNING (1976)
Jack Higgins
荒れ狂う海に帆船は散った! 若き恋人たちとともに・・・
久々の小説ネタバレでーす。
もともとは小説のネタバレ用としてスタートした当ブログ、映画はほんのオマケのつもりでしたが・・・ すっかり映画ネタバレに占領されてしまいました。
だんだん小説1冊を読み通すのがシンドくなってきたんですよねえ・・・ 目もかすんできたし(涙
それでもオワコンとなっていく英国冒険小説を少しでも紹介したい、という使命感でジャック・ヒギンズの傑作の1本、「脱出航路」をサクッとお送りします。
いつもは孤独でプロフェッショナルな男たちを好んで描くヒギンズ、今回は珍しく英国冒険小説の伝統にのっとって、荒れ狂う海を舞台に帆船が活躍する、壮絶な自然災害をクライマックスにもってきた群像劇。
ヒギンズにしては、かなりの異色作?
第2次大戦も終わりが近づいたころ。
ブラジルで暮らすドイツ人たちは、出国禁止令を破って密かに南米を脱出、祖国ドイツを目指そうとしていた。
敗戦間近のドイツ人への風当たりが強くなってきたし、それになんといっても連合国に蹂躙される前に故郷へ帰り、家族と一目再会したいのだ・・・
今は沿岸をヨタヨタ行き来する商船として、最後のお勤めを果たしている老朽帆船ドイッチェラント号。
もう帆船の時代なんてとっくの昔に終わっており、今回もベルガー船長の指揮のもと、どこか近場の港に行きますよーみたいな雰囲気を漂わせ、フワフワ~と出港する。
だが、そのボロボロになった船内には祖国を目指す同胞ドイツ人たち、さらに直前に駆けこんできたドイツ修道女の集団を抱えていた。
このまま連合国艦艇が牙をむく大西洋を北上、悲願の大地ドイツへと向かうのだ!
ワクワクする出だしですが・・・ 実はこの帆船の物語は全体の1/3程度なんだよねー。
海洋小説を書きなれないヒギンズ、ホーンブロワー・シリーズのように帆船だけでドーンと勝負するのは避けたようです。
とはいえ、比重は少ないながらも帆船のシーンは本格的で、読んでいて船酔いでゲロ吐きそう。
イギリス艦に停止命令を食らって船内をあらためられたり(スウェーデン船に偽装、さらにゲロゲロ作戦で切り抜ける)、コックがゲス野郎で修道女のねえちゃんにチョッカイ出したり・・・ そして度重なる荒天に翻弄されまくったり。
この帆船でもっとも頼りになる男、それは寡黙で鋼鉄の意志を持った金髪の美青年、掌帆長リヒター。
可憐な修道女見習いロッテとの初々しい恋模様が描かれますが、これがラストの悲劇に・・・
さて本書の真の主人公はドイツ海軍の英雄、Uボート艦長のポール・ゲリッケ。
それにしても「鷲は舞い降りた」のシュタイナー大佐といい、ヒギンズはカッコいいドイツ人を描くのが上手いですなー。
そんなにドイツ軍に思い入れがあるのか?
ゲリッケは不可能と思われたイギリス軍港への襲撃を成功させた後、うっかりUボートから落ちてイギリスの捕虜に・・・(潜水艦から海に落ちる人も珍しいですが、たまたま難しい水路を浮上して航行中にウッカリ)
拘束され北方へと護送されるゲリッケ、同じ汽車に女医のジャネットや米軍のリーヴ少将など、登場人物たちが同乗。
彼らは皆、運命に導かれるようにスコットランド沖合の離島、なんもない辺鄙なファーダ島へと集まってくるのだった。
ゲリッケとリーヴ、2人の男性の間で揺れるジャネットの恋心(話をこれ以上ややこしくするな)は置いといて、ファーダ島に接近する前代未聞の低気圧・・・
イギリスにはもちろん台風なんてないけど、北極から張り出す低気圧によって相当な暴風が吹きまくるらしい。
そしてファーダ島の沖合までやってきたドイッチェラント号、念願のヨーロッパを目前にして、史上空前の大暴風雨に遭遇!
こうなってはやむを得ず、これまで禁じていたSOS信号を発信。
たまたま偵察飛行で付近にいたドイツ空軍機がそれをキャッチ、ネッカー機長は危険を冒して暴風空域にとどまり、帆船の位置を確認しながらイギリス側に救助要請。
ここに敵・味方が一体となってドイッチェラント救出作戦が始まった!
まずファーダ島の海難救助要員マクロードを中心に島の爺さまたちが救命艇を発進させるが、海に出たとたん転覆!
続いてリーヴ少将が郵便配達船で接近を試みるが、巨大な波に粉砕され、部下たちとともにドイッチェラントに乗り移って、どうにか一命をとりとめる始末。
早くしないと巨大なワシントン暗礁に帆船が激突してバラバラになってしまうで-!
燃料切れギリギリタイムを超過してもなお、現場上空にとどまっていたネッカー機長だが、ついに帰投せざるを得なくなる。
しかも帰りぎわに英軍機に攻撃されて瀕死の重傷・・・ を負いながらも、どうにか無事に生還。(この後、死んだかも)
こうなったらもう、捕虜だけどゲリッケになんとかしてもらうしかない!
もちろんドイツ人救出のため最初から協力を惜しまないゲリッケ、島の老人たちとともに救命艇を島の反対側の静かな港まで陸路で運び(あまりに過酷な作業のため途中で死者が出る)、そこから発進して、どうにかドイッチェラントに接舷、生存者たちを収容・・・ だがリヒターとロッテの姿がない!
実はリヒター、しばらく前にロッテの姿が見えないことに気づき、浸水した船内を捜索していた。
ロッテはリヒターにもらった大事な指輪を船室に忘れてしまい、それを取りに危険な船内に戻ってしまったのだ・・・
折れた柱の下敷きになり瀕死のロッテを発見するリヒター。
もう彼女を救い出すことはできない。
「ずっと、いっしょにいるって約束しただろ?」と、彼女の手を握りしめ・・・
一瞬の後、大波が帆船を暗礁に叩きつけ、船体は粉々に砕け散り、すべては荒れ狂う海に飲まれていった。
嵐が去った後、リーヴや島の人々は、救助に尽力してくれたゲリッケを解放、小さな船を与えて旅立たせてやるのだった。
おしまい。
うーん、2人の悲恋がまさにヒギンズ節!
ジャック・ヒギンズ作品のネタバレ
「鷲は舞い降りた(完全版)」
http://puripuriouch.at.webry.info/201704/article_16.html
「サンタマリア特命隊」
https://puripuriouch.at.webry.info/201801/article_7.html
「非情の日」
http://puripuriouch.at.webry.info/201402/article_4.html
「裁きの日」
http://puripuriouch.at.webry.info/201609/article_2.html
「テロリストに薔薇を」
http://puripuriouch.at.webry.info/201307/article_12.html
「嵐の眼」
http://puripuriouch.at.webry.info/201411/article_19.html
「虎の潜む嶺」
http://puripuriouch.at.webry.info/201503/article_5.html
「地獄の鍵」
http://puripuriouch.at.webry.info/201303/article_1.html
ジャック・ヒギンズ原作の映画化作品ネタバレ
「鷲は舞いおりた」
http://puripuriouch.at.webry.info/201704/article_22.html
Jack Higgins
荒れ狂う海に帆船は散った! 若き恋人たちとともに・・・
久々の小説ネタバレでーす。
もともとは小説のネタバレ用としてスタートした当ブログ、映画はほんのオマケのつもりでしたが・・・ すっかり映画ネタバレに占領されてしまいました。
だんだん小説1冊を読み通すのがシンドくなってきたんですよねえ・・・ 目もかすんできたし(涙
それでもオワコンとなっていく英国冒険小説を少しでも紹介したい、という使命感でジャック・ヒギンズの傑作の1本、「脱出航路」をサクッとお送りします。
いつもは孤独でプロフェッショナルな男たちを好んで描くヒギンズ、今回は珍しく英国冒険小説の伝統にのっとって、荒れ狂う海を舞台に帆船が活躍する、壮絶な自然災害をクライマックスにもってきた群像劇。
ヒギンズにしては、かなりの異色作?
第2次大戦も終わりが近づいたころ。
ブラジルで暮らすドイツ人たちは、出国禁止令を破って密かに南米を脱出、祖国ドイツを目指そうとしていた。
敗戦間近のドイツ人への風当たりが強くなってきたし、それになんといっても連合国に蹂躙される前に故郷へ帰り、家族と一目再会したいのだ・・・
今は沿岸をヨタヨタ行き来する商船として、最後のお勤めを果たしている老朽帆船ドイッチェラント号。
もう帆船の時代なんてとっくの昔に終わっており、今回もベルガー船長の指揮のもと、どこか近場の港に行きますよーみたいな雰囲気を漂わせ、フワフワ~と出港する。
だが、そのボロボロになった船内には祖国を目指す同胞ドイツ人たち、さらに直前に駆けこんできたドイツ修道女の集団を抱えていた。
このまま連合国艦艇が牙をむく大西洋を北上、悲願の大地ドイツへと向かうのだ!
ワクワクする出だしですが・・・ 実はこの帆船の物語は全体の1/3程度なんだよねー。
海洋小説を書きなれないヒギンズ、ホーンブロワー・シリーズのように帆船だけでドーンと勝負するのは避けたようです。
とはいえ、比重は少ないながらも帆船のシーンは本格的で、読んでいて船酔いでゲロ吐きそう。
イギリス艦に停止命令を食らって船内をあらためられたり(スウェーデン船に偽装、さらにゲロゲロ作戦で切り抜ける)、コックがゲス野郎で修道女のねえちゃんにチョッカイ出したり・・・ そして度重なる荒天に翻弄されまくったり。
この帆船でもっとも頼りになる男、それは寡黙で鋼鉄の意志を持った金髪の美青年、掌帆長リヒター。
可憐な修道女見習いロッテとの初々しい恋模様が描かれますが、これがラストの悲劇に・・・
さて本書の真の主人公はドイツ海軍の英雄、Uボート艦長のポール・ゲリッケ。
それにしても「鷲は舞い降りた」のシュタイナー大佐といい、ヒギンズはカッコいいドイツ人を描くのが上手いですなー。
そんなにドイツ軍に思い入れがあるのか?
ゲリッケは不可能と思われたイギリス軍港への襲撃を成功させた後、うっかりUボートから落ちてイギリスの捕虜に・・・(潜水艦から海に落ちる人も珍しいですが、たまたま難しい水路を浮上して航行中にウッカリ)
拘束され北方へと護送されるゲリッケ、同じ汽車に女医のジャネットや米軍のリーヴ少将など、登場人物たちが同乗。
彼らは皆、運命に導かれるようにスコットランド沖合の離島、なんもない辺鄙なファーダ島へと集まってくるのだった。
ゲリッケとリーヴ、2人の男性の間で揺れるジャネットの恋心(話をこれ以上ややこしくするな)は置いといて、ファーダ島に接近する前代未聞の低気圧・・・
イギリスにはもちろん台風なんてないけど、北極から張り出す低気圧によって相当な暴風が吹きまくるらしい。
そしてファーダ島の沖合までやってきたドイッチェラント号、念願のヨーロッパを目前にして、史上空前の大暴風雨に遭遇!
こうなってはやむを得ず、これまで禁じていたSOS信号を発信。
たまたま偵察飛行で付近にいたドイツ空軍機がそれをキャッチ、ネッカー機長は危険を冒して暴風空域にとどまり、帆船の位置を確認しながらイギリス側に救助要請。
ここに敵・味方が一体となってドイッチェラント救出作戦が始まった!
まずファーダ島の海難救助要員マクロードを中心に島の爺さまたちが救命艇を発進させるが、海に出たとたん転覆!
続いてリーヴ少将が郵便配達船で接近を試みるが、巨大な波に粉砕され、部下たちとともにドイッチェラントに乗り移って、どうにか一命をとりとめる始末。
早くしないと巨大なワシントン暗礁に帆船が激突してバラバラになってしまうで-!
燃料切れギリギリタイムを超過してもなお、現場上空にとどまっていたネッカー機長だが、ついに帰投せざるを得なくなる。
しかも帰りぎわに英軍機に攻撃されて瀕死の重傷・・・ を負いながらも、どうにか無事に生還。(この後、死んだかも)
こうなったらもう、捕虜だけどゲリッケになんとかしてもらうしかない!
もちろんドイツ人救出のため最初から協力を惜しまないゲリッケ、島の老人たちとともに救命艇を島の反対側の静かな港まで陸路で運び(あまりに過酷な作業のため途中で死者が出る)、そこから発進して、どうにかドイッチェラントに接舷、生存者たちを収容・・・ だがリヒターとロッテの姿がない!
実はリヒター、しばらく前にロッテの姿が見えないことに気づき、浸水した船内を捜索していた。
ロッテはリヒターにもらった大事な指輪を船室に忘れてしまい、それを取りに危険な船内に戻ってしまったのだ・・・
折れた柱の下敷きになり瀕死のロッテを発見するリヒター。
もう彼女を救い出すことはできない。
「ずっと、いっしょにいるって約束しただろ?」と、彼女の手を握りしめ・・・
一瞬の後、大波が帆船を暗礁に叩きつけ、船体は粉々に砕け散り、すべては荒れ狂う海に飲まれていった。
嵐が去った後、リーヴや島の人々は、救助に尽力してくれたゲリッケを解放、小さな船を与えて旅立たせてやるのだった。
おしまい。
うーん、2人の悲恋がまさにヒギンズ節!
ジャック・ヒギンズ作品のネタバレ
「鷲は舞い降りた(完全版)」
http://puripuriouch.at.webry.info/201704/article_16.html
「サンタマリア特命隊」
https://puripuriouch.at.webry.info/201801/article_7.html
「非情の日」
http://puripuriouch.at.webry.info/201402/article_4.html
「裁きの日」
http://puripuriouch.at.webry.info/201609/article_2.html
「テロリストに薔薇を」
http://puripuriouch.at.webry.info/201307/article_12.html
「嵐の眼」
http://puripuriouch.at.webry.info/201411/article_19.html
「虎の潜む嶺」
http://puripuriouch.at.webry.info/201503/article_5.html
「地獄の鍵」
http://puripuriouch.at.webry.info/201303/article_1.html
ジャック・ヒギンズ原作の映画化作品ネタバレ
「鷲は舞いおりた」
http://puripuriouch.at.webry.info/201704/article_22.html
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