【ネタバレ】「スマイリーと仲間たち」 ジョン・ル・カレ

SMILEY'S PEOPLE (1979)
John Le Carre


スマイリーと仲間たち (ハヤカワ文庫 NV (439)) - ジョン・ル・カレ, 博基, 村上
スマイリーと仲間たち (ハヤカワ文庫 NV (439)) - ジョン・ル・カレ, 博基, 村上


スマイリーの生涯をかけたカーラとの暗闘、ついに決着

007最新作の公開も延期になっちゃったし、英国スパイ・スリラー3連読!
久々に小説のネタバレで緊張するなー。
1冊目はジョン・ル・カレ、英国情報部「サーカス」の腕利きジョージ・スマイリーとソ連KGB大物スパイマスター、通称「カーラ」との戦いを描く3部作最終章、「スマイリーと仲間たち」
今さらですがル・カレは元情報部員、007とは対極のリアル系スパイ小説の大御所。(あまりリアルだと公務員機密保持法に引っかかるし悩ましいところ)
ル彼の名は聞いたことない人でも、「ハニートラップ」という彼が小説のために作り出した造語は一般にも広まってるし、ご存知でしょう。(かかってみたいなハニートラップ)

本作のネタバレを読むような方は、先に「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」「スクールボーイ閣下」をお読みになってると思いますが、一応スマイリーカーラの因縁をサクッとまとめてみましょう。
・その昔、インドあたりで活動するカーラを捕らえたスマイリー、尋問に臨む。
「君ねー西側に亡命したらどうなの、命も守ってあげるし報酬も出るよー」と誘いをかけるも、ただの一言も発しないカーラ
やがてソ連との取引でカーラは帰国するが、その際にスマイリーが貸してあげたライター(新妻アンからの贈り物)をちゃっかりもっていってしまう。(伏線)
「裏切りのサーカス」ではスマイリーゲイリー・オールドマンが演じてましたが、原作ではもっと小さくて小太りな感じ。

・その後、粛清されたかと思われたカーラだが、しぶとく生き延びてKGBの大物へと出世していた。
彼の操る工作員ビル・ヘイドンが英国情報部ナンバー2まで出世、情報部の情報がダダ漏れになる歴史的被害を与える。(これはキム・フィルビーというスパイが実際に引き起こした事件を元ネタにしている)
スマイリーの調査と推理によってヘイドンは御用となるが、映画ではヘイドン「英国王のスピーチ」コリン・ファースが演じました。
ちなみにスマイリーを要注意人物としてマークしていたカーラスマイリーに精神的ダメージを与えるため、ヘイドンアンと不倫させる。(実際にスマイリーの心に多大な傷を与えた)

ヘイドンから情報部を取り戻したスマイリーカーラに反撃開始。
香港にカーラの工作の痕跡を発見、追及した結果、中国に潜入したカーラの大物工作員を突きとめ拉致する・・・
というところが前作までの内容。
カーラに大きな痛手を与え、一勝一敗みたいな感じでしょうか。
前作は長くて大変でしたが、今回は割と短くまとまってます。(舞台はドイツやスイスなどヨーロッパ)

そしていよいよ始まる最後の戦い。
きっかけは、スマイリーが現役時代に工作員として使っていた、「将軍」と呼ばれる亡命者の死。
彼はスマイリーカーラに関する「何か」を伝えようとして(スマイリーは引退していたので連絡がつかず)、公園で射殺された。
呼び戻されたスマイリーは調査を開始、最終的にカーラの「隠された秘密」に到達するのだが・・・
というわけでいきなりネタバレ、核心となるカーラの秘密=カーラの弱点について明らかにしましょう。

感情などまるでない怪物のようなカーラであったが、実は愛する女性がいて(故人)、その間に生まれた娘がいたのだ!
父親の仕事のせいかもしれないが、娘タチアナは幼くして統合失調症を患い・・・
ソ連の遅れた病院に娘を預けることをためらった父は、初めて祖国を裏切って、こっそりと娘を出国させスイスの設備の整った療養所に入れることに成功。
さらに在スイスのソ連大使館職員を特別にスカウト、週に1回は娘を見舞わせ、どんな様子だったかレポートさせる。(さらに治療費の振りこみもさせる)

KGBの人員や予算を私的に流用してしまってるので、これがバレたらカーラは死刑になるだろう。
そこで「西側に亡命した母親を訪ねる」という名目で「若い女性工作員」を西側に潜入させる、そういう作戦のために人員も金も使ってるんやでー、という体裁を整えるのだが、ここでカーラは痛恨のミス。
通常の任務で使っている一流工作員を使うと、鋭い彼らには私的流用がバレてしまうかもなので、普段は使わないような三流のボンクラを手下に採用してしまった。
やはり三流は三流、そこから情報が洩れて、最終的に「将軍」の耳に・・・
ここまで探り出すのにスマイリーの忍耐強い調査、そしてコニートビーといった「スマイリーの仲間たち」の協力があったわけだ。

そしてインド以来、スマイリーは再びカーラにメッセージを送る。
「うちらはこれだけ証拠を押さえてるし、チクったらあんたは死刑やろ。そうなると娘さんは治療費が払われないまま放り出されることに・・・ もう1度言うが、西側に亡命せんか? あんたも娘さんも守ってやる」
ついにカーラは折れた!
最後の舞台はベルリンの壁・・・ 名作「寒い国から帰ってきたスパイ」を思い出す。(あのラストシーンにもスマイリーは現場にいた)
夜の検問所を抜け、労働者風の小男が西側に・・・ カーラは相変わらず無言のまま、だがスマイリーの足元に例のライターを投げ捨てる。
車で連行されるカーラを見送りながら、涙にくれるトビー
第1部からスマイリーの手足となって働いたピーター・ギラムも、「ジョージ、あんたの勝ちだ」

「わたしの?」スマイリーはきき返した。「うん。そうだな、そうかもしれない」(村上博基:訳)


生涯をかけた宿敵、生涯をかけた戦い、生涯をかけた仕事・・・ すべて終わった、という感慨がこみ上げる。
年老いたスマイリーはこの後、のんびり余生を過ごしてお迎えを待つのか、まだ何か戦いが残っているのか。
ま、しばらくル・カレはお休みして、ちがう作家を読みましょう。


ジョン・ル・カレ作品のネタバレ
「寒い国から帰ってきたスパイ」
https://puripuriouch.at.webry.info/201503/article_2.html
「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」
https://puripuriouch.at.webry.info/201608/article_15.html
「スクールボーイ閣下(上)」
https://puripuriouch.at.webry.info/201903/article_18.html
「スクールボーイ閣下(下)」
https://puripuriouch.at.webry.info/201903/article_19.html

ジョン・ル・カレ原作映画のネタバレ
「寒い国から帰ったスパイ」
https://puripuriouch.at.webry.info/201609/article_3.html
「裏切りのサーカス」
https://puripuriouch.at.webry.info/201705/article_4.html
「ロシア・ハウス」
https://puripuriouch.at.webry.info/201503/article_1.html


ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫NV) - ジョン ル・カレ, le Carr´e,John, 博基, 村上
ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫NV) - ジョン ル・カレ, le Carr´e,John, 博基, 村上
スクールボーイ閣下 上 - ジョン ル カレ, 村上 博基
スクールボーイ閣下 上 - ジョン ル カレ, 村上 博基
スクールボーイ閣下 下 - ジョン ル カレ, 村上 博基
スクールボーイ閣下 下 - ジョン ル カレ, 村上 博基

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